LoopExercise(ループエクササイズ)高橋亜紀さん

    LoopExercise(ループエクササイズ)高橋亜紀さん

    乳がんの術後でも負担なく取り組めるループエクササイズ生みの親 高橋亜紀さんの体験記です

    私に乳がんが見つかった時は33歳。長女6歳、長男2歳でした。

    告知を受けた時の気持ちはショックというよりも冷静でした。

    実はこの時、私の父の体調が悪くなり、膵臓または胆管に何か悪いものがありそうだ開腹してみないと分からない、という家族全員が不安を抱えていた時でした。

    このような状況下で、私は気になるしこりを病院で診てもらった矢先でした。とにかく父の手術日に重ならないように、仕事を休まないようにと淡々としていました。

    私にとっては自分のことよりも、いつも元気な父のことがあまりにもショックで、自分のことはどこか二の次でした。

    2人に1人はがんになる時代。我が家はまさに4人のうち2人が同時にがん告知を受けることになりました。術後、父は余命宣告を受け延命のための治療、私は治すための治療が始まりました。今思い出しても自分の治療のことよりも家族で必死に過ごした思い出の方が強く心に残っています。そしてその思い出が今の私を支えています。

    この時から私にとって命のカウントダウンが始まりました。

    自分自身の治療に対する気持ちは、小さな子どもたちを育て上げたい、家族での時間を大切に過ごしたい、父の治療で大変な生活を支えたいという部分が生きる励みになっていて、抗がん剤治療以外はあまり感情を持つことなく決断していました。

    父の治療に比べれば自分のことなんて・・・という気持ちもありました。私にとっては治療する側とそれを支える家族側の両方を同時に経験しました。わかるようで分からない、なんとも言えない経験でした。

    でも、心が壊れてしまいそうな部分を仕事が支えてくれました。

    社会とつながること、元気を演じること。不安な気持ちを埋めるように無我夢中に動き回っていました。

    抗がん剤の副作用で体がきつい時もありましたが、仕事で体を動かした後はいつも心身共に軽くなっていました。私にとって運動は副作用を軽くする薬のようでした。

    W H O(世界保健機関)は「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にもすべてが満たされた状態にあることをいいます(日本W H O協会訳)」と定義しています。

    私の母も同じ運動指導を仕事としており、一番大変だった母にとっても運動という点が大きな心の安定になったのではないかと思います。

    それから私たち家族は2年半、父との大切な時間を過ごしました。

    この間に私も抗がん剤治療、放射線治療、ホルモン治療をしました。

    父が逝ってしまってから、父のことを重ねながら自分の身体と会話することが増えました。

    大袈裟かもしれませんが、私にとって家族みんなで闘う闘病が始まってから「期待」という言葉を使わず「希望」だけで生きてきました。今もそう思って生きています。

    今回のことでいいこともそうでないことも「何事にも限りがある」ということを痛切に感じました。大変なことも見方を変えれば、これも限りがあるのだとも思えるようになりました。父の2年半の闘病は大変だったけれども幸せでした。

    いつか終わっちゃうんだなぁ、今このタイミングで出会っている家族や友人とはすごいご縁なんだな。と俯瞰して見ることもできるようになりました。

    治療以外にも様々なことがありましたがとにかく目の前のことを希望だけでやってきました。

    そうと言っても、あの頃の日記やメモを見ると私は必死だったし、心の波が激しかったようです。ウィッグのこと、肌のこと、まつげのこと、吐き気のこと・・・。少しでも楽しさを見つけようと色々とやっていました。

    動いていないと思考が止まらず悲しくなっちゃっていたのも事実です。

    病気になった理由を見つけたくて、落とし所をつけたくて、目の前のことを必死でやっていて、ふと気がつくと涙を流しながら運転をしていることは7〜8年続きました。

    イタリア視察時写真

    このようにして動いた結果、人生のパズルがひとつずつ完成してくような不思議なご縁に出会うことが増えました。治療がひと段落した頃に、イタリア視察をひらめき、それを機に多くのご縁につながり、今があります。

    イタリアで訪ねた同じ乳がん経験者のルチーアは、がんの場所と治療もほぼ一緒、人生の経験も似ていました。

    ループエクササイズが誕生したのもこのイタリア視察がきっかけです。

    私の動くための意欲という火種は「こんなことがあったらいいだろうな、楽しいだろうな」というシンプルなことです。

    そして原動力のひとつは乳がんを経験したことだと思います。

    イタリア視察時写真

    病気への不安はカタチを変えてずっと持っています。

    健診のたびに、崖っぷちに立たされているような感覚は今もまだ。むしろ強く感じる時もあります。(いつも私の不安な気持ちや副作用の愚痴を何度も聞いてくれる妹に感謝します。)

    動ける身体に感謝して、まず今目の前にあることをしっかりとやってみる。「やる」ではなくやってみる。これくらいの感覚が私にはちょうど良いです。

    ループエクササイズは「やってみる」の繰り返しと多くの方からいただいたご縁とお知恵でカタチになりました。私の心が元気でいられるのは、体を動かすことで立ち止まりそうな心を動かしてきたからだと思います。運動が様々なリスクを軽減することがわかってきました。

    ループで肩を回してみるだけでも一つの動きであり立派な運動です。

    これらの経験がきっかけで、運動習慣の普及活動が自分のライフワークになりました。

    これから先のことは誰もわかりませんが、

    限りある中でどんな時もユーモアを持って面白がりたいと思うし、こんなのあったらいいなをカタチにしていきたいなと思います。

    こらからも決断に迷ったら「楽しそう」な方を選択していきたいと思っています。

    高橋亜紀さんのループエクササイズは、プレマーレ(〒248-0021 神奈川県鎌倉市坂ノ下32-17 feel由比ヶ浜202)、またはTIPNESSのプログラムでも受講可能です


    高橋 亜紀
    (たかはし あき)プロフィール

    ◈ コンディショニングスタジオPreMare(プレマーレ)代表
    ◈ シナプソロジーアドバンス教育トレーナー
    ◈ ひめトレ教育トレーナー
    ◈ ピラテティスリーダーシップコンセプト
     コアインテリジェンス・モジュール1〜4認定
    ◈『月刊NEXT』2014年インストラクターオブザイヤー受賞

    経歴

    1976年2月生まれ
    神奈川県出身。運動指導歴24年。
    鎌倉市生涯スポーツ指導員として健康体操指導をする手塚泰子の長女として生まれ、20歳から手塚泰子のアシスタントとして指導を始める。
    2004年 本格的に地域での健康体操を軸とした運動指導をスタート。
    2007年 日本体育協会認定スポーツ指導員、「スポーツクラブ ルネサンス」にてインストラクター兼トレーナーとして活動。高齢者対象の健康体操サークルをスタート。
    2009年 ピラティスインストラクター資格取得。
    2011年 神奈川県体力づくり体操連盟理事就任。シナプソロジーアドバンス教育トレーナーとして人材育成事業やセミナー講師を行う。
    2012年 日本コアコンディショニング協会 ひめトレ教育トレーナーとして全国での養成業務に携わる。
    2015年 フィットネス専門誌 『月刊NEXT インストラクターオブザイヤー2014最優秀賞受賞。
    同年6月、イタリア視察「乳がん事情・高齢者施設・フィットネス」について視察する。
    2016年 マリジョゼ・ブロム氏に師事しピラティスを学ぶ。オリジナルエクササイズ『からだほどき®︎』を考案。
    2017年2月 鎌倉坂ノ下にコンディショニングスタジオPreMare(プレマーレ)創業。『からだほどき®︎』商標登録取得。
    2018年 LoopExercise®︎商標登録取得。
    2020年 LoopExercise®︎特許出願中。

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