乳がん経験者さんの体験談

    (化学療法・手術・放射線治療後8か月後の夏休みにはウィッグで海外旅行に行きました)

    がんと告知を受けたのは、再び仕事を始めたのをきっかけに受けた検診でのことでした。

    エコー・マンモグラフィーの検査をした3日後、携帯電話に電話がかかってきました。

    「左胸部にあきらかなしこりが見られるので、至急入院ができるような大きな病院へ行ってください」。
    次の日、紹介状を持って病院へ行くと先生がエコーの画像を見ただけで「悪性ですね」と判断されました。腫痛がかなり大きいとのこと、至急その日から受けられる検査を全て入れてくださいました。

    私はそれまで風邪もほとんどひかず、自分自身の健康体を自負していたので、本当に「まさか私が」という心境。頭の中が真っ白になり、その日どうやって帰ったかも思い出せないような心境でした。

    当たり前のようにこの先もずっと続くと思っていたものが急に見えなくなったような気がしました。

    治療方法の決定


    化学療法にあたっては、最初は不安ばかりでした。友人の中にもまだがんに罹患した人を知りませんでしたし、自分がこの先どのようになるのか具体的に想像できるのは、ドラマや映画などに出てくる入院生活や死のイメージでした。
    すぐそばに同じような経線をしている方がいて、その人が治療をしながらも自分らしく生活ができている様子を知っていたら、ここまで不安はなかったのかもしれないと今では思いますが、この時は急に自分だけが別世界に入り込んでしまったような孤独感がありました。

    治療のスタート


    初めて病院内の「化学療法室」という部屋へ行くと、思ったよりもたくさんの方がいくつかの個室にわかれて点滴を打っている姿が目に入りました。これから仕事へ向かうのかスーツ姿の方もいて、また読書をしたり、思い思いのスタイルで化学療法を受けている方の姿を目にして、それまで抱いていたイメージとは少し異なる印象でした。
    最初の抗がん剤投与のあと、電車で一人帰宅時に、気分が悪くなったらどうしようだのと色々と心配しましたが、自宅までたどり着けた時はホッとしました。これは私の場合ではありますが、副作用と思われる倦怠感は2日後ぐらいからおこり、2週間目に入ると落ち着いてくるという波がありました。その波に慣れはじめたころから、倦怠感が強い時は家で休み、動ける時に買い物へ行ったり、外出をしたり、 最初ほどの不安は徐々に消え、治療をしながら日常生活をこなせていけていることに自信が持てるようになりました。 (人によって感じ方や症状も違いますので、副作用のタイミングやどのような過ごし方ができるのかなど主治医の先生や看護師の方に相談していただくのが一番良いと思います)。

    化学療法の副作用でおこる見た目の変化(アピアランス)について


    がんの告知を受けた直後の治療方針の決定後、看護師さんに化学療法の副作用で「髪・眉毛・まつ毛がなくなる」と聞いた時は、本当に耐えがたく、受け入れ難くショックでした。 実際ACという化学療法スタート後、3週間後にはかなり抜け、それは、がんと診断を受けてから本当にあっという間の出来事でした。心の準備、ウィッグの準備、色々が整理されないままノンストップで進行していきました。

    最初はとにかく人目を避けたいと思っていましたが、仕事にも行かないといけないですし、運動会、保護者会と学校行事は定期的にありますし、避けることが結局はできないので、もう気にしないようにする以外には方法はありませんでした。 皆さんに「今がん治療中なんで!」と説明して歩くわけにもいかないわけですし 、もう「髪型やまつ毛のない自分にもし違和感を感じても気にしないでくださいね!」といった感じで、皆さんにどう受け取るか全てお預けしたまま、そのことにも具体的にも触れずに開き直って過ごすしかありませんでした。でもそれで良かったと思ってます。「私も数年前に同じく乳がんで、、」と話しかけてくださる方がいらっしゃったり、事情を知っている親しい方がうまく周囲に説明してくれたりしてくださったりで、なんとなくそんなんでどうにかなった気がしています。

    その後患者会などに参加すると、その時々の状況に合わせた臨機応変なメイクやファッションを逆に楽しんでいる方にお会いする機会がとても多かったです!。これを機会に大きくイメチェンしたり、ターバンやアクセサリーを大胆に楽しんでいらっしゃる姿などは逆に素敵だなと後になってつくづくと思いました!。

    手術のための入院

    入院生活は過ぎてしまえば、あっという間の10日間でした。手術室へ向かう時は、とは言ってもやはり緊張しましたが、終わってみると「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないですけど、今ではその時のことは、「入院中は窓からキレイな夜景が見えたな」とか、「3食の食事を出してもらえて美味しかったな」 などプラスな思い出しか残っていないのは不思議です。手術のすぐ直後は、腕が上がりづらかったりしたはずなんですけど、、痛みというのは忘れやすいようにできているんでしょうか。

    今になって思うこと

    治療がひと段落したとしても、それ以前の自分にまた同じように戻るということはないと感じています。

    今までとは違う「がんと向き合いながらの生活」がこれからも続いていきます。

    でも不思議とそれを静かに受け入れているような気がします。

    がんにり患した経験のなかった時の自分に戻りたいかというと意外とそういう気持ちは起こりません。不思議です。

    先のことはわかりません。でもそれはがんになってもならなくっても同じなんだと思います。でもその「先のことはわからないから」といういい意味の諦めができたことで、色々なことがシンプルに考えられるようになった気もしています。

    今の目標は「おおいに生き急ぐ!」です。

    なるべく先延ばししない!余計なことに頭を悩ませている時間を減らし、どんどん進んでいこう!というのが今の心境です。

    手術を受ける直前の麻酔の瞬間、ものの数秒で意識がなくなりました。意識がなくなる瞬間は生まれて初めてだったので、意識のある世界と意識のなくなった先の世界がたった数秒の堺でしかないことを実感しました。

    私にはこの体験ができたことが、貴重でした。再び目が覚めた時、なんとなくこの世にもう一回もどしてもらったような錯覚になりました。がんになる前のようにのんびりと暮らしていたらもしかしたら色々なことを言い訳にして先延ばしにしていたような気もします。 大事なことに身をもって気づかせてもらえたのではないかと今は思うようにしています。

    また長い治療期間によって、同じ境遇の方々にたくさん会えたこと、「がんの経験」といった共通点によって、今までだったら絶対に関われなかったような方々と関わることができました。これはもはや役得?のような気さえしてきます。

     がんと告知を受けた瞬間は、こんな心境になる時を迎えることができるなんて到底おもえませんでした。

    なので本当に不思議です。

     今はあの告知を受けた時の自分自身と同じ境遇にいる方へ、不安を少しでも取り除けるようなお手伝いができたらと思っています!。

    プロフィール

    Yukikoさん(40代主婦)

    Her2型乳がん ステージ3から治療を経験。化学療法、放射線治療、Her2型に特化した化学療法、全摘出手術、ホルモン治療を経験しました。がんの治療を行う中で、同じような境遇の方々に多く出会えたことが、がんになってから得られた宝物だと思っています。現在はがん患者の交流会などへ参加しています。

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